fc2ブログ

パスワードのくせに!!

※作家の小野美由紀さんが主催する「身体を使って書くクリエイティブ・ライティング講座」で書いたものです。

「のび太のくせに!」
ドラえもんで、のび太がちょっと生意気な態度をとったときに、ジャイアンが言うセリフだ。
なぜそう言うのかというと、ジャイアンはのび太のことを自分より下だと思っているからだ。
自分より下の人間が、自分に対して生意気な態度をとることが許せないのだ。


情報セキュリティーの世界では、長らく「パスワード」がそのジャイアン的地位を不動のものとしてきた。
しかし最近では技術の進歩により、その地位を脅かすものたちが現れ始めた。
指紋、顔、光彩、これらはそれぞれの人に固有のものであるため、これで守られているものを破ることはなかなか難しい。


こうなると、セキュリティー界の序列は変わる。
今までトップの座に君臨し続けていたパスワードの地位は大きく下がり、少しでも昔の栄光を語ろうとしようものなら、顔認証や光彩認証が言うのだ。

「パスワードのくせに!!」と。



こうなってしまったパスワードはどうするか?
先日テレビで、タップダンスの起源が紹介されていたのだが、それによるとタップダンスは、ある国で時の政権によってドラムやパーカッションを鳴らすことを禁止されたアフリカ系移民の人々が、それに対抗するために地面を打ち鳴らしてリズムを奏でたことから生まれたとのことだった。
そう、古来より、力では到底かなわない権力に対して、人々は芸術によって対抗してきたのだ。


安全性や利便性、そういった実力の面ではもう最新の技術にはかなわない。
ならば道はただ1つ。芸術性での対抗だ!!
パスワードたちがそのことに気づいた結果生まれたのが、「パスワード文学」なのだ。


パスワード文学は最初こそ、その本来の役割において長すぎて不便というもっともな理由で批判されたが、その後の先人たちの努力と、文字列を予測不能にするための奇想天外なストーリー展開が次第に評価され、大きく発展した。
その結果、何のとり得もなかった私も、この世界に名を残すことができた。
何も悔いはない。


そんな私の最後の作品を、最後まで読んでくれてありがとう。
遺産は全て2階の金庫に入れているから、このパスワードを入力して開けなさい。

コメント

非公開コメント

高瀬 雄一郎

変な設定や工作を用意して、その中でみんなでふざけてもらえるような遊びを日々考えています。
twitter:@hentekoasobi
Facebook:/yuichiro.takase

Twitter

ACCESS