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原付 vs 箱根駅伝

毎年お正月になると日本中のファンを楽しませてくれる箱根駅伝。
僕も毎年テレビで見ている。

母校の威信、仲間との友情、汗、そして勝利。
できることなら、自分も出場して熾烈なトップ争いを繰り広げてみたい。

しかし、箱根駅伝のランナーたちは1区間20キロほどの距離を1時間そこそこで駆け抜けてしまう。当然僕はそんなペースで走ることはできない。

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そこで、原付だ。

原付は、車と違って制限速度が時速30キロと決まっている。
何の制限もなく一定の速度で走れば時速20キロの箱根駅伝より速いが、当然、交通ルールを守って信号には従わなくてはいけない。
それに、幅の広い道で右折をする時は、原付だけの特別ルール「二段階右折」をしなければならない。(二段階右折の詳細はこちら

そういった交通ルールの制約が加わった原付であれば、僕も箱根駅伝とデッドヒートを繰り広げることができるのではないだろうか。

検証してみることにした。


いざスタート地点へ
今回の対決は、次のルールで行うことにした。

・原付は、時速30キロの速度制限、信号、二段階右折といった交通ルールを全て守る。
・原付は1区間終わるごとに休憩をとり、その時間はタイムに含めない。区間タイムの積み上げで競う。
・箱根駅伝のスタートは朝8時だが、原付は準備ができ次第のスタートとする。(レンタルバイクのお店が朝8時からしか営業してなかったから)
・走るコースはこちら(往路)こちら(復路)の情報に従う。
2018年の箱根駅伝の結果と対決する。

原付のレンタルの手続きを済ませ、いざスタート地点の大手町へ。
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スタート地点は路上駐車だらけだった

図4 

図5
ユニフォームを着て、

図6
タスキをつけて、

図7
ヘルメットもかぶり、

図8
原付大学、1区の高瀬です!

ユニフォームはジャージの上から着た。原付に乗るときは肌を露出させない服装でというのが交通ルールで定められているからだ。決してあの露出の多い格好で原付に乗るのが恥ずかしいからではない。決して。

そして、「〇〇色のタスキ、××大学」などと紹介されるタスキは、夜道でも反射する蛍光イエローで、大学名ではなく「交通安全」の文字が入ったものにした。
原付大学は、ルール遵守・安全第一で箱根路に挑むのだ。
図らずも、メルカリで買ったユニフォームの胸のアルファベットもSafetyの「S」だった。

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交通ルールに従って手袋もした。暑い。。


そしてスタートの時を緊張の面持ちで待ち、
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心の中で鳴らした号砲とともに、路上駐車のすき間からスタートした。
原付 vs 箱根駅伝のスタートだ。
図9
アクションカメラをハンドルにつけました

来た、二段階右折!
今回の対決で僕がいちばん緊張していたのは、二段階右折だ。
箱根駅伝の選手たちであれば緊張のピークはスタート時かもしれないが、交通ルールをきちんと守ることを信条とし、タイムロスも最小限におさえたい原付大学としては、この二段階右折をスムーズにできるかの方がプレッシャーだった。

二段階右折は、
・交通整理が行われている(≒信号がある)交差点で、
・右折や左折専用のものも含めてレーンが3つ以上あり、
・二段階右折禁止の標識も出ていない

もしくは、
・上記の条件は満たさないけど二段階右折指示の標識が出ている

場合に行わなくてはいけない。

右折をする交差点に差しかかった際は、その交差点が二段階右折の条件に当てはまるかをすぐに判断して、心の準備をしなくてはいけない。
瞬時の判断を行わなくてはいけないという点においては、これはまさにスポーツなのだ。

大手町をスタートして約5キロ、地下鉄三田駅前の交差点。
図10
おっ、これはもしや。

図12
二段階右折禁止の標識もない

図11
念入りな確認

きた!二段階右折だ!ついにその時は来た。
通常の右折の時は右側の車線に移動するところを、左側車線走行をキープして気持ちを落ち着かせる。

そして信号は青に。
図13
GO!二段階右折!

図14
そのまま直進して、

図15
切り返す。ふぅ。

図16
そしてまたスタート。タイムロスは30秒ぐらい。

この交差点が十字路ではなく丁字路だったことから、ほとんどの車が右折していく中1人突き当りに直進していくのは「あいつどうしたんだ?」という感じで恥ずかしかったし、突き当りに向かって直進していく景色は完全に凶行犯の視界でドキドキした。

そんな心理的なハードルを乗り越えて、そつなく二段階右折をこなすことができた。きっと映像で見ている他の区間の選手たちも、この走りに鼓舞されていることだろう。

ちなみに、二段階右折が必要になった交差点は往路・復路とも2か所ずつとそれほど多くなく、全体のタイムへの影響はそこまで大きくはなかった。


1区でいきなり繰り上げスタートのピンチ
その後、品川区、大田区、川崎市を抜けて横浜市鶴見区に入ると、最初の中継地点、鶴見中継所が見えてきた。
図17
矢印の歩道橋が中継地点

図18
ここも路上駐車多いな

図19
ゴーーール

原付を停めるやいなや時計を止める。走行中は、他の20校のランナーたちに対して自分がどのぐらいの位置にいるのか分からなかったので、結果を比べることに対してワクワクしていた。

正直なところ、少し遅いのかなとは思っていた。
東京都内はとにかく信号が多く、また、川崎に入ると信号の数は減ったものの大きな通りとの交差が多くなって、停止1回あたりの待ち時間が長くなっている印象だった。

なので、後方の集団を走ってるのかなぐらいに思っていたのだが、実際のところは驚きの事実が待っていた。

1位:東洋大学(1.02.12)
20位:東京国際大学(1.03.55)
21位:原付大学(1:11:50)

後方の集団を走ってるかな・・・などと思っていたのを恐縮してしまうぐらいに、圧倒的な最下位だった。しかもこれ、あと22秒遅かったらトップから10分遅れなので繰り上げスタートだ。

ここ鶴見中継所は、復路ではゴール前最後の中継所となりトップと後続のタイム差が大きくなることから、毎年繰り上げスタートが起こりやすい場所になっていて、残り数秒でタスキがつながったり、仲間の姿が見えているのに繰り上げとなってしまうなど、そこで生まれるドラマは箱根駅伝の見どころの1つになっている。
そのドラマを、まさかの1区からお茶の間にお届けしそうになってしまった。ドラマどころか、もっと頑張れと怒られてしまいそうだ。

信号の多い都市部では圧倒的に箱根ランナーの方が速いということが分かった。


2区:中継地点を見逃す
続いて2区。
各区間を出発する際には地図でコースを確認し、中継所の画像とその直前の目印になりそうな場所を覚えてからスタートするのだが、2区から3区へタスキが渡る戸塚中継所はここだった。
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釣り具を売っている「タックルベリー戸塚中継店」。
店の名前に「戸塚中継」が入ってくるのがすごい。これはぜひ実際に見てみたいぞ!そんなことを思いながらスタートした。
左手に戸塚警察署が見えたら間もなく中継所だということもインプットした。


区間終盤、中継所に向かうダラダラとした上り坂を登る。
図22
そろそろお腹すいたなぁ。

図23
中継所の近くでどこか食べるとこあるかな。

図24
そろそろ警察署あってもおかしくないんだけど。。

図25
あれ?ここもう3区では!?

2区の最後は上り坂で終わるイメージだったのに、しばらく下りが続いたことで違和感を感じ、歩道橋に書いてあった「原宿」の地名で悟った。ここ、3区だ。
停まって調べてみたところ、既に中継所を2キロ近く過ぎていた。


では、先ほどの写真を巻き戻してみましょう。
図26
通りすぎてるーーー!


図27
頼りにしていた戸塚警察署が木に覆われていて全く分からなかったこと、そしてレース中にも関わらず昼ご飯に頭を巡らせていたことが原因だ。

箱根駅伝のランナーたちも大学生。走っている間、終わったら何食べようとか、好きな女子のこととか、家賃の振り込み行かなきゃとか考えているかもしれない。でも彼らには、中継所を通り過ぎそうになっても正しく導いてくれる走路員の方々がいる。
原付大学にはそれがない。なぜなら勝手にやっているからだ。コースのチェックは念入りにやっておかなければいけないという教訓を得た。

結局、途中で時計をチェックした(と思う)地点から中継所までの距離を測り、その区間は(多分)信号がなかった(気がする)ので、時速30キロで走り続けたということにしてタイムを算出することにした。
図28 

そんな、やや眉唾な結果がこちら。

(区間)
1位:青山学院大学(1.07.15)
20位:國學院大学(1.11.11)
21位:原付大学(1:14:24)

(総合)
1位:東洋大学(2.09.34)
20位:東京国際大学(2.14.11)
21位:原付大学(2:26:14)

全然歯が立たない。
区間トップとの差は約7分と1区よりは短くなったが、トータルで見るともはやタオルを投げたくなるような差がついてしまった。駅伝だから、タオルじゃなくてタスキか。

2区も、横浜市を鶴見区から戸塚区へとほぼ横断するようなコース。途中で横浜駅前などの中心部も通る。勝負は信号の数次第ということがはっきりしてきた。

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昼ご飯はラーメンにした


3区~4区:原付大学の快進撃
2区までで圧倒的な差をつけられてしまった原付大学だったが、都市部を過ぎた3区からは快進撃が始まった。

まずは3区。
(区間)
1位:原付大学(0.58.17)※区間新(過去最高は1.01.38)
2位:東洋大学(1.02.17)

(総合)
1位:東洋大学(3.11.51)
20位:東京国際大学(3.21.15)
21位:原付大学(3:24:31)

これまでの記録を3分以上縮める区間新で、最下位まで3分の位置まで追いついてきた。

そして4区。
(区間)
1位:原付大学(0.54.10)※区間新(過去最高は1.03.36)
2位:神奈川大学(1.02.21)※区間新

(総合)
1位:東洋大学(4.14.13)
2位:青山学院大学(4.16.16)
3位:神奈川大学(4.16.52)
4位:拓殖大学(4.18.20)
5位:早稲田大学(4.18.21)
6位:原付大学(4:18:42)

過去の記録を9分も上まわる区間新。「助っ人外国人」を連れてくる大学は多いが、そんなレベルではない、「助っ人宇宙人」ぐらいの記録だ。

そしてここへ来て総合順位は6位までジャンプアップ。しかもトップとは4分差。
これはもしかしたら奇跡の逆転往路優勝があるんじゃないか!?
前半には考えられなかったスポーツ漫画のような熱い展開。自分が明らかに興奮しているのを感じ、4区の小田原中継所では思わず「おぉぉ!」と声をあげてしまった。

自分で勝手に箱根駅伝のコースを原付で走って、タイムを比較してその激しい争いに沸き立って楽しんでいる。この対決の結果はまだ分からないが、人生の勝者にはなっていると思う。


5区:山の原付現る
そして、箱根駅伝最大の見どころ、5区の山登り。
図30
カーブで多少原則するものの、斜度はまったく問題なし。グイグイ走る。

図31
敵となったのは寒さと心細さ(実はもう夜9時)

図32
最高地点付近での気温は、5月なのに9度。

本家では、沿道に詰めかけた多くの人々のにぎやかな声援の中を走るが、夜の箱根は思っていた以上に人も車通りもなく、心霊写真みたいな画像が並んでしまった。
しかし走りの方は、坂のきつさや応援のなさなどおかまいなしで時速30キロをキープし続ける。

往路ゴールGIF
ゴーーール

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真っ暗

その結果、
(区間)
1位:原付大学(0.52.13)※区間新(過去最高は1.12.46)
2位:法政大学(1.11.44)※区間新

(総合)
1位:原付大学(5.10.56)
2位:東洋大学(5.28.29)
3位:青山学院大学(5.29.05)

奇跡の大逆転往路優勝!うぉぉぉー!総合トップの東洋大学に18分近くの大差をつけた。

事前から5区は圧勝するだろうとは思っていたが、まさか2位の法政大学の選手を20分近くもぶっちぎるとは思っていなかった。
5区で驚異的な記録を残したランナーは「山の神」と呼ばれて箱根駅伝のスターとなるが、今後もし52分台で走る選手が現れたら、ぜひ「山の原付」と名付けてもらいたい。山においては、原付は神をも上まわる存在なのだ。

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ゴール地点の碑が立っていたが、これも墓場みたいな写真になってしまった


復路:頑張れ青山学院
往路で2位以下に大差をつけてしまったので、復路は安定の独走だった(実際には最初から最後まで独走なのだけど)。だけど、前日の4区でデッドヒートの興奮を知ってしまった僕は終始、「青山学院頑張れ、追いついてこい。」と思っていた。


図33
昼間の箱根はこんなに爽やか

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小田原中継所前のバス停。井上陽水の少年時代みたいな地名。

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小田原中継所にある「かまぼこの里」にいた ”かまぼこ天使”

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7区では途中で給油したが、抜群のピット作業でロスしたのは3分だけ

図34
あくびしてた

図35
10区最後の2キロは信号だらけで、2つおきのペースで赤になっていた。いいぞいいぞ!

図36
復路の結果

がしかし、結局青山学院が原付大学の背中を脅かすことはなかった。
往路と同じく6区~8区でさらに差が広がったうえに、9区が2区とは違ってあまりブレーキにならなかったのが大きかったと思う。

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ゴール地点の読売新聞前

という訳で、原付 vs 箱根駅伝の結論としては、「原付は箱根駅伝より14分12秒速い」でした。
陸上競技として考えたら14分差は大きいけど、原付と人が200キロ以上走って14分しか違わないと考えたら、箱根駅伝のランナーはめちゃくちゃ速い。


コースのことがよく分かった
今回やってみて、時速30キロで走るというのは想像以上に心地よかった。
風を感じることはできる一方で、速すぎないし疲れないので街のこともよく見ることができる。感覚的には、しんどくないサイクリングという感じだ。原動機付自転車という名前はピッタリだと思う。

そしてそのペースで走ることで、箱根駅伝のコースの特徴をよく感じることができた。
5区以外でも難所とされている坂や走りやすい区間など、テレビ放送とかそこで表示されるデータで何となくは知っていたが、実際に走ってみると、「確かにこのタイミングでこの上りは嫌やわぁ」とか、「もし自分が走るならこの区間がいい」など、実感として味わうことができた。

図37
2区:権太坂

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3区の後半は平坦で見通しが良くて、海沿いなので気持ちがいい(もし僕が箱根駅伝を走るなら3区に起用されたい)

図38
8区:遊行寺の坂

普段から選手をよく見ていて、かつ実際にコースを体感できていたら、どの区間に誰を起用するかはかなりイメージしやすいだろうなと感じた。
なので、もし今後万が一箱根駅伝の監督になる機会があったら、原付に乗ってでいいので実際にコースを走ってみることをお勧めする。

そして、実際のコースの景色や苦楽を味わえたことで、これから箱根駅伝を見るのが今まで以上に楽しみになった。


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自力で走らなくてもビールはうまい

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高瀬 雄一郎

変な設定や工作を用意して、その中でみんなでふざけてもらえるような遊びを日々考えています。
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